ああ、太陽のメキシコ
人々はすばらしく友好的
フランス人もそうだった
イタリア人もそう
でもドイツ人はそうじゃなかった
わたしはたどたどしい外国語で
馬鹿みたいに見えたって
別に気にしない
私はぶらぶらするのが好き
暑くて丸みを帯びたエスコンディードのプールや
サン・ミゲールからグアナファトへ向かう道を。
二時間の道のりは、まがりくねり、
カーブ続きで、ガードレールもなく、
二車線の山路を
メキシコ・シティで一番ヨーロッパっぽい場所へ上る
私が誰といっしょだったかって?
彼はわたしが死ぬのを恐れているのと同じくらい
老いるのを恐れていた
彼は毎日何度も鏡をのぞき、
指で梳く
灰色になっていく髪を
うぬぼれなんかじゃなく、ただ現実に確信が持てないだけ
じゃあね、ベイビー
彼女は急いでドアを出ながらそう言った
ビーチで黄金色に焼けた君、ジェーン
属国の薄暗がりの向こう
何も言わず嘘も言わなず
時間の小石から砂浜に横たわる
あなたのペニスはわたしの謎
私を解放し、わたしを置き去りにする
わたしは夜明けの船の奴隷のように息を荒げる
あなたはぎこちなく呻き揺れながら私にまたがり
あなたは舌でわたしの歯を叩き
わたしは息を切らして喘ぎ苦しむ
そんな姿勢ではリラックスできない
わたしはワックスで再び模り
わたしのモニュメントはあなたの死より長く生き続ける
詩人の部屋には、征服の絵が掛けられ
彼女は彼の指に光る指輪から放たれる明かりで
温かくなったベッドを見つけた
ふたりとも一糸纏わず
彼女は彼の前にひざまずき
銀の鏡と黒い鉄のベッドの間で
彼を口に含んだ
彼の英語は標準的でなまりはないが
わずかにオクラホマのアクセントがあった
彼はそこで彼女への愛を告白した
でも彼女の耳には入らなかった
夫を亡くした悲しみに沈んでいたから
彼女は彼の声を聞いた、それは言葉ではなく
彼女を柔らかに落ち着かせ
シーツの上で1週間愛し続けた
あなたと並んで横たわる
体全体であなたに触れる
肌と肌が触れ合う
互いの肩にもたれあい
向き合って唇を重ねあう
並んで横たわる
あなたの左を私の右肩に、
ダイヤモンドの指輪をした手をあなたの腰に回し
舌を絡めあい
わたしは固くなり
あなたの濡れて迎え入れる
わたしをあなたの上に乗せ
両手に包み
献身な愛を捧ぐ
強く押し付け
ワイルドで刺激的な午後
あなたと並んで横たわる
アラスカのジェーンのことで分かっているのは
ぼんやりとした白黒の写真だけ。
水色のオーバーオールを着て、私が好きな左胸に
黒でジェーンと刺繍がしてある。
硬いアルミのシルバーの帽子から
茶色の長い髪がこぼれ落ち
柔らかい両手は厚い手袋で覆われている
小さな足には重たい黒いブーツを履いて
彼女はまっすぐに私の目を見ていた
むしろカメラをというのが正しいだろう
彼女の微笑みは美しい弧を描き
弧を描きながら動く唇
彼女の言葉にも力強く弧を描かせる
背景は真っ白
雪のように純白
彼女は重心を右足にして
右手を腰に
ジェーンは直立した雪の天使
雪の中の暗号
白く色あせたパピルスの上の象形文字
いつものように、わたしは
彼女のシャンポリオンになりたい
何度も何度もいつまでも彼女を訳し続ける
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